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建築とは凍った音楽  〜建築家・現場監督・職人 それぞれの役割を添えて〜

更新日:1月12日





VOL.50


とても遅れ馳せながら本年初の投稿になります。


 挨拶の時期はとうに過ぎましたが一応、2023年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 2023年の一記事目なので、また、こちらのブログですがちょうど今回で!50記事目に至りました〜!読者の方々のお陰様で続けられました、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。


 そんなこんなで、以前予告していた実用的な内容からは一度少し離れたような内容をお届けできればと。もう少々お待ちください m(_ _)m


 日々の業務は日々の業務&現場で汗水垂らす職人たち!が基本の、メンタル的にも肉体的にもそれ相応のマッチョさからは切っても切り離されることのない弊業界ではありますが、少しは知を交えた文化的っぽい内容を書いて、世の中やお客様方に届けるのもまた我々の仕事のうちの一つだろう、と。

(磯崎新という建築界の巨人 お笑い界でいうとさんま / たけし / タモリ クラスのような方のうちの一人が新年に入ってからあの世に旅立たれてしまい、一若手の芸人として思うところもあり。)


 さてこのタイトルの “建築とは凍った音楽“ とは、このブログ内で一度一瞬触れましたが、詩人のゲーテ、詩人というのか小説家というのか思想家というのか…ドイツの文豪、ウォルフガング・フォン・ゲーテが残したらしい、メタフォア=暗喩・隠喩=比喩の一種 です。平たくいうと、「例え」ですね。


 で、この“建築とは凍った音楽“って一体全体?というところかと思うのですが、建築(ここでは単に建物)って基本的には動かない物質で構成されてはいるものの、確かにそこには様々なリズムやメロディーらしきもの、そんなこんなが章や節のように組み合わされて出来ており、うーん何て言えばいいのか分かりませんが、何となくはご理解頂けるかとは思いますが、固定されてはいるものの、物質が織り成すリズムというのか、“ 凍った音楽 “ って素敵な表現ではないでしょうか。


 さーいたー さーいたー チューリップーのー 花がー♪ みたいな、必要かつ良いものではあれど、歌うのも、住んだりするのもそんなような簡単な建物しかないような世界じゃあ、多分詰まらない事かと。


 少し脱線すると、コルビュジエという、絵画でいうとピカソに当たるような(分かりやすく言って)建築家がラ・トゥーレット修道院というとある大きな修道院を設計するにあたり、クセナキスという当時の現代音楽家に柱のスパンを決めてもらったということもなどもあったらしく(どこまで本当か分からない逸話みたいなものではありますが。)、建築と音楽には相通じる部分は多いのかも知れません。ま、それを言うたら何の分野やジャンル同士でも相通じるものはあると思いますけど。


 で、今回何が言いたいかというと、昨年末に、知っている方も多いのではないかと思うのですが、yahoo知恵袋という匿名のQ&Aサービスに 建築 というカテゴリーがあり、建築に興味があるけどまだ「建築家や職人」のそれぞれの役割が良く分かってない、多分中学生くらいだったのかなぁ?の方の質問があってヒマ潰しがてら答えてみるにあたって、自分的にも、自分にも他者にも向けて建築や建築家の仕事をどう捉える・例えると最もいいんだろう?と17年間くらい考えて続けていた事に妙案(それまでは運動会の組体操でのピラミッド笑 だったのですが、やたらと苦しさや危険性を伴うイメージも強い&クライアントや社会も含めたポジションが何だかうまくハマらず。)が生まれたので、一人の方だけではなくここに書いておくとスッキリするかもなと思って書いてみようと思った次第です。


先ずは役割分担からの結論になりますが、


建築家(設計士) → 作曲家   

現場監督 → 指揮者    

職人   → 演奏者       

業者やメーカー  → 音の供給


です。これを思いついた際にはもう、自分も含めた関係者一同テンションの上がる…納得の行きそうな?プリツカー賞受賞級の考え方だなこれは。と思いました(笑)というか、ゲーテがずーっと昔に言ってたはいたけど、役割を当てはめて考えてみたことはなかったもので、おぉぉ、これもバッチリハマる!というところ。さすが文豪。


さてこれがどういうことか言うと、


・建築家(設計士) → 作曲家


建築家や設計士は先ず世の中や、現代を生きているお客様方から、こういう曲・こんなような曲を作って、演奏してくださいな。と頼まれます。


そこで建築家や設計士であるわれわれは楽譜(図面)を書いたり、部分的だったりすごく小さい音での演奏(CGや模型製作)をして、こんな曲でいかがですか?と打ち合わせをします。


作曲するにあたっては、最低限、音や音楽に関する知識や感覚を持って、社会の倫理や物理法則 笑 などの “抗ったら試合終了“する、かつ“当たり前“でもある大きなルールから建築基準法などの様々な中〜小のルールにも則って行います。楽譜の読み書き、小さな演奏をする技術も必要になります。


(実際には実現の可否もあるので、現場の方々と相談しながら設計を行う部分も案件次第で大なり小なりあります。)



・現場監督 → 指揮者


して、よし楽譜が出来た。という段になってレッツ!ビルド!で現場が動き出す訳ですが、その曲の演奏を指揮するのは現場監督。


楽譜の通りに演奏されているか、それぞれの楽器・演奏者の全ての音の程度を聞き分けながらコントロール、それら全ての調和をもたらす 超 重要なポジションです。なんかこう、現場監督って、ぶっちゃっけ世の中でも建築界でもほとんど陽が当たらないっていうか、すごく地味〜な役割って感じがしますよね。うん、ぶっちゃけ。なんか、地味で面白みのないおっさんがやってそうな職業っていう印象かと(笑)何やってるのか分かりやすい具体的なイメージが薄いことかと思います。


ただ、彼や彼女らがやってることというのは、オーケストラで言えば、その演奏中はこそお客様方に背中を向けているので分かりにくいけれど、作曲家が伝えたい曲のイメージを理解して、演奏者をまとめて、お客様や世の中にそれを実際に伝えるという、その曲がどのように演奏されるかは正に現場監督次第。という、その音楽の支配人です。


ポップにお伝えすると、漫画が原作のドラマにもなった『のだめカンタービレ』でいうところの千秋新一に当たる人であり、深く広い知識や経験、様々なセンスもないと出来ないであろう、プロフェッショナルな職業。です。


ここでは現場監督と書いてますが、建設に関する「施工管理」全般の事でもあります。


(小さな案件だと建築家や設計士が現場監督を兼任する場合もあり、また、ここでは分かりやすく区別をしてはいますが、これまた実際には作曲側も、演奏中は指揮者ほど全てをどうこうはせずとも、その曲を同程度にしっかり聞いて、問題なく・どうしたら最も良いものとなるか、定期的に確認・打ち合わせをしながら演奏が行われます。)



・職人   → 演奏者 


さてここまできて、やっと誰にでも馴染みのある、職人、実際に演奏をする人たち。お客様がどんなに大金を積んでもどんなに美しい想いを抱いていても、作曲家がどんなにいい曲を書いても、現場監督が観客総立ちのスタンディングオベーションを目指して最高の指揮をしようと意気込んでも、演奏出来る人がいないとそれら全て、意味がなくなります。


一口に職人と言っても、鳶や大工を始めその他様々な職人がいる訳ですが、


案件単位だと自分は監督みたいなものなので、サッカーでの本当の選手は彼らであり、建築を音楽に例えるなら、実際に演奏するのは職人たち。


で、一言に“職人“と言っても、見習い・プロ・超一流 の職人までいる訳ですが、これまで仕事で出会った職人たちでも、ただのペンキ塗りの若者〜この人一流だわぁ…まで色々いたなぁと。


一人、何年も前のことながら、とある案件でたまたま一緒にランチをした20代の若い職人がいたのだけれど、自分のことを「たかが職人、底辺。」みたいな言い方をしてる奴がいたもので、「そう思ってるうちはそんな程度の職業であって、そんなに浅い世界な訳ねーだろバーカバーカ!職人ナメんな!!」って、逆に言ったれば良かったなぁ…と後悔している部分があるのでここに書いておきますが。(話聞いてたら結構な案件に携わっている子ではあったし、普段1on1では接することないであろう設計屋を前に半分はへりくだってるかもしれないというところだったので、躊躇してしまったのですが。)


一例としては面識などはありませんが、情熱大陸に出演した、職人超えてアーティストとも言えるようなレベルの職人や、そこまででなくとも一流〜良くも悪くもさして何も考えていない単なる労働者まで存在する世界であって、そんじょそこらの建築家や設計士より輝きたかったら輝ける可能性もある世界である点、世の中にお伝えしておきたく。


オーケストラでも、もう少しカジュアルなジャズやその他のバンドでも、ソロのパートってある訳ですが、全体のバランスはあるのでそこまで一つの職人技を特別に際立たせるような案件というのは世の中全体としてかなり少なくはあるものの、職人界にもそう言うプレイもできる、「(良い方の)ヤバいやつ」はいて、いつか超がつくような一流の方々とも仕事をさせてもらえる機会などあればなぁと思います。うーん、想像してみるに設計の方が試されるような気持ちになりそうでちょっと怖いけどめっちゃワクワクする…。


とまぁ、職人に関してはこんな感じです。デザイナーとかそれぞれに所属してる会社のほうが代表して世の中に名前なり顔を出しがちではあるけど、職人いてなんぼの世界。大変ご苦労様です&今後とも。



・業者やメーカー  → 音の供給


業者さんやメーカーさん。は、音そのもの、その中身の供給。職人たちはそれぞれにそれぞれの楽器というのか、仕事道具を持ってる訳だけど、音が出ない事には何も響かず。うーん、音が届くには空気が必要だし、いうたら空気とも言えるのかなぁ。いないと全員即死。笑 コロナ初期で水回り製品の供給が途絶えて、業界全体が窒息死しかけていたのは記憶に古くなく。当たり前のように色々と供給してくれており言わずもがな、いつもありがとうございます。




して、こんな事を考えたきっかけになったyahoo知恵袋の質問のそれ自体は、昔の日本の棟梁/大工/職人などの役割やそれぞれの言葉の定義みたいなところを聞いていたのですが、この点に関しては歴史も関係する結構深い話でもあり考えるのも書くのも面白いし、また何かの機会で書ければと思いますが、上記例えはこんなところです。うーん、良くも悪くもないとは思いつつ、毎度一緒になって演奏もしてる気持ちになってたけど、こうやって書いてみると作曲するのが主な役割なんだなぁ設計は。と思いました。


自分で演奏できないところが難しくもあり面白くもある訳だけど、ワンピースの方のルフィ(時事ネタとしてはフィリピンの方ではございません。)の名言に、


「俺は剣術を使えねェんだコノヤロー!!!」

「航海術も持ってねェし!!!」

「料理も作れねェし!!」

「ウソも付けねェ!!」


「おれは、助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」


てのがありますが、


前々から思っていたのだけれども建築家も酷いもので、(事務所としての最大のビジョンはありますが。)


「建物を作る目的自体がそもそもない」

「作るための費用がない」 から始まり、


「重い物一つ持ち上げられない」

「指揮者ほど上手くタクト振れない」

「それぞれの演奏何一つとしてできない」

「物資の確保も出来る訳がない」


と、書いてみると、多くの方々がいない事には、ここまで何にも出来ない職業ってそうないんじゃないか??????ってくらいで、上記を眺めていたら絶望を超えてなんか笑えてきました笑 基本は自己責任&現場で働いて下さる方々は案件毎のクルーなので、いい意味で、どんな時も助けてくれ!いないと生きていけない !!とまでは “ 言えません “ が、まぁそれに近いレベルで支えてもらわない事には、


「建築家(設計)だけだと!!何も出来ない!!!」


ここに声高らかに宣言&心の底から四方八方に感謝しながら、努力します。個々別の案件でこれなので、事務所の運営もとなるともはや無だなぁ…。建築家や設計士だけだと、無。


今年に入って一記事目だったので、微力ながらもうちのような事務所の社会的意義という面で書いてみたのですが、たま〜に書く仕事への正しい(と自分なりに思う)姿勢シリーズvol.3くらいにもなって個人的に良かったです。


ブログを始めた理由は 1記事目 に①〜③で書いたのですが、加えて、自分の人生のほぼ全てを賭けるであろう ④ 建築 の魅力を少しでも世の中に伝えていきたい と思います。


それでは、関係各位へのリスペクトを持って、2023年もがんばります!

何卒、よろしくお願いいたします。


Thank you for reading.


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