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高山秀則

便利な思考方法 ーヒューリスティクスとアルゴリズムー

更新日:1月17日


VOL.3


ブログを始めるだけ始めたはいいけれど、コンテンツを多くの人に読んでもらうにはどうしたらいいんだろう?というところで、単純に自分が世の中に夥しくある情報で目を通しているものってなんだろう?と考えると、


①必要なもの

②有益なもの

③おもしろいもの

④前向きになれるもの

⑤希少なもの


 (樹形図としては①ー②③④⑤でしょうか)かなと思いまして、かつ軽くググったところ"ユーザーファーストであれ"という至極まっとうな回答がありましたので、ブログ初期ということもありできるだけ普遍的に喜ばれる情報を。と思い立ったので、一つの思考方法のようなものを紹介してみようと思います。


 聞き慣れない単語ではあると思いますがタイトルにある通り、ヒューリスティクスとアルゴリズムという考え方です。


 謎の横文字でここでもうドロップアウトしてしまう人がいるかもしれませんが、人がするすべての意思決定にはスタート→ゴールがある訳ですが、この考え方を意識すると効率的かつ苦しみを減らしてその過程を経ることが出来ますし、万人に理解できるよう噛み砕いて説明してみますのでご覧ください。


1. ヒューリスティクスとアルゴリズムとは

2. ヒューリスティクスとアルゴリズムの例

3. ヒューリスティクスとアルゴリズムのメリット・デメリット

4. ヒューリスティックとアルゴリズムの用い方

5. まとめ


1. ヒューリスティクスとアルゴリズムとは

 まず、ヒューリスティクスというのは「直感的・感覚的」な意思決定の方法、アルゴリズムというのは「理知的・分析的」な意思決定の方法です。


 英語の直訳ではheuristics=経験則の、algorithm=計算可能な などと訳されます。


2. ヒューリスティクスとアルゴリズムの例


 どういうことかというと、建築設計を例にすると、「間取り」というものを考えたとします。


 ここで、「んー、諸条件から各部屋は25㎡の2LDK!ん?これでいいのかな?いいんだよな?あ、でも15㎡の3LDKの方が何かと便利かな?いや、でも、それぞれの部屋は広い方がいいし多目的にも使えるから、25㎡の2LDKにしよう。」と、先ずはおおよそのゴールに【勘】でアプローチしてからその正解に近い結果を検証して結論を導き出すのが前者のヒューリスティックで、


 「ふむ、考えられる選択肢として ⑴15㎡の3LDK ⑵25㎡の2LDK ⑶20㎡の2LDK+ウォークインクローゼット がある。このなかでは諸条件と満足度が釣り合う最適解は⑵だ。」と、その【可能性を展開させてから選ぶ】のがアルゴリズムです。


図示するとこんなかんじ


左:ヒューリスティクス 右:アルゴリズム




3. ヒューリスティクスとアルゴリズムのメリット・デメリット


 さておおよそこの二つの対になる考え方は理解いただけたのではないかと思いますが、それぞれのメリットとデメリットです。


 ヒューリスティックのメリットは、それらしい結論に至るまでの労力がかからない・早い。という点にあります。ただデメリットとしてはいわゆる産みの苦しみのようなモヤモヤした状況を経るのと、その結論が正しいかどうかという検証を行う必要があります。


 対してアルゴリズムはモヤモヤを整理してアウトプットした中から選択をしていけばいいので初めから正解に近い結論に至りやすく、スマートに結論までアプローチできますが、可能性を展開するという作業(労力)が必要になります。


4. ヒューリスティクスとアルゴリズムの用い方


 では、どういう状況やシーンで使い分けたらいいかです。


 ヒューリスティクス→個人や少人数で何かを行い、時間や労力となるリソースが少ない場合アルゴリスム→複数人で何かを行い、作業量をかけられる場合


 なぜかというと、ここでもまた建築設計に関することを例にさせて頂きますと、例えば弊事務所のようなこじんまりと運営している設計事務所だと、某大人気事務所のSANAAのようにこれでもかというほどに沢山のパターンのスタディ模型(習作模型)を作ってその中からベストなものを検討するという事は物理的に困難です。ただ、今現在は最終的にどうするかというモヤモヤも裁量もほとんど自分にあるので、事務所内で考える範囲であれば解答に感覚的にアプローチした方が早く・また作業量も減らせるのでそういった場合はヒューリスティックな方法の方が適していると言えます。


 対して作業量となる何かしらのリソースがあり、かつ多くの人間とのコンセンサスも形成する必要のある場合はアルゴリズムの方が適しています。なぜか。一個人の頭の中で描かれていること→解答らしきもの と、ダイレクトにジャンプすると、なぜそのような答えなのか?というプロセスが見えないので共同作業を行なっている人間からすると「?!?!」とついていけず、不可解な部分が生まれてしまいます。


 今は解散してしまったものの、学生時代を長いこと共に過ごした夏目知幸という友人がいて、その彼が率いるシャムキャッツというバンドがありました。彼らの活躍を陰ながら応援していてWEBで彼らのインタビューを読んでいたのですが、バンドメンバーの方々が「夏目の作曲の方法はおかしい(仲良さげなわいきゃいしたかんじのやりとりでしたが)」という言い方をしていたのですが、これをこの概念に当て嵌めると論点は明快で、


 夏目本人は最初から彼の中にある完成形となるある一点を目指して作曲をする、"ヒューリスティクス"(いわゆる天才的・閃き に基くもの)な方法で答えにアプローチしているものの、そのメロディーラインやBPMに何かを合わせておそらくいくつかのパターンを考案せにゃならんギター・ベース・ドラムという各パートのメンバーは"アルゴリズム"でもってその一点に合うよう並走する、という具合になっているのだな。と。


 確か夏目氏がすべての楽曲を作っていたわけではなかったかと思うし、「何か変」でも曲が出来てしまっていたというのは幼少時代からの気の合うメンバーでやっていたバンドだけあるな、というところではありますが、あー、それは!と思いつつ間接的に読んだ内容からわざわざ本人達に伝えるでもないし…ということもあったもので、この概念の理解に役立ててもらうべく勝手に例として出演していただきました。


 と、このように、このヒューリスティクスとアルゴリズムというのは建築設計に限らず、作曲にも適用できるし、今晩の夕飯の献立は何にしよう?(んー、何となく豚の生姜焼き!さてそれを作るには?:料理のレシピ本の美味しそうな3種類の中から、昨今の家族の栄養バランス・冷蔵庫の中身・家計等々鑑みて豚の生姜焼きを選択=ヒューリスティクス:アルゴリズム ですね。)まで汎用的に使える考え方です。


 それ自体を意識せずに使い分けている人ももちろんいるでしょうし、自分ももちろん常日頃これらワードでもって意思決定の全てを分類している訳ではありませんが、概念として知っておくとさて何かに取り掛かるぞ!という時に便利なのではないかと思います。

5. まとめ


ヒューリスティクス…直観である意思決定をしていくアプローチの方法

アルゴリズム…モノゴトを分解・組み立てながら意思決定をしていくアプローチの方法


 以上、こういった"思考の方法の分類"は毎年春になると書店に大量に並ぶ長年のベストセラー『思考の整理学/外山滋比古』というのがあって、タイトルはやや難しそうなもののコラムのような形式で幾つものトピックが書かれていてどこからでも読めてかつ、薄い文庫本サイズなのでお勧めしておきます。


Thank you for reading.

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