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用の美

更新日:1月17日

VOL.13


閑話休題。でもありませんが、


月末だ、いろいろと振り込みせにゃー、全部タダだったらいいのになぁ…んなわけないよなぁな…と思いつつ(笑) つい先日近所の銀行ATMまで歩いていた時に発見した、ハシゴ。





何をしているのかは一目瞭然、植木屋さんが木を剪定しているわけですが、ん?なんか綺麗だぞ?と思って隠し撮りさせて頂きました。


ただこれ、自分は初めて見たのですがよくあるものなのでしょうか?or最近生まれたもの?植木屋さんが剪定をしている風景はたまには見かけますが、こんな形のものは見たことなかったので、植木業界に割と最近生まれた梯子なのではないか??と思っているのですが、この梯子、全体的にかなり綺麗だと思います。いや、もはや美しいんじゃないかと。


で、その時にパッと浮かんだワードが「用の美」というやつで、デザインに携わっている人間であれば聞いたことはない、日本を代表するプロダクトデザイン界のレジェンドであるデザイナー、故柳宗理氏の作風というか思想として(正確にはその父の柳宗悦氏の運動から提唱されたもの。)有名な概念なのですが、言葉じりだけ捉えれば意味は簡単、「機能から生まれる美しいデザイン」ということです。


ただこの言葉も柳宗理氏の事も当然よくよく知っている(デザイナーの不養生でほとんど安い家具しか使っていない私ですが…エレファントスツールという氏の腰掛け椅子を持っていますし、いいプレゼントとしてカトラリーを人に贈ったことも2度ほどあります。)のですが、なんとなく「ヨウノビ」くらいにしか認識していなかったものの、、、これぞ用の美ってやつだなぁ…(!)。と。


氏の作品はそれはもう優美なものばかりなので当然そういうものにしか見えないし、使用感としても実際にそうなのですが、特に見てくれのデザインを美しくしようとしたでもないであろう「植木剪定用の梯子」がただ美しかったので、「用の美そのまま」「The 用の美」を発見して、用の美という素晴らしさをしかと認識した。柳先生、これですよね?!あぁびっくりした〜。という気持ちです。


植木の剪定オンリー用かどうかは定かではありませんが、


①長時間作業するので普通の梯子より安定するよう足元を幅広く

②支える棒を一本


というただそれだけなのですが、


無駄が全くないので構造的にもウソがなくて見ていて気持ちがいいし、曲線の部分がなんとも美しく、踏面の規則的なスパンが曲線部と相まってその間隔を変えているように感じられ、いいリズム感を与えていて見ていて飽きない。


といったところでしょうか。そして、ただその機能のまま使われるだけ。建築やデザインのことを学び始めて早15年以上、ここへ来て本物(というかその原型ですね。)に出会って驚きました。うーんこれデザインした人、おそらく何も意識してはいないのだろうけど、素晴らしい。


もちろん本職中の本職にも取り入れられるような事柄ではありますが、ひょんなことからプロダクトデザインもしていますのでクイックめにトライ出来るので、いいね!に止まらない発見というか出会いだったというか、何かでこういうデザインもできないかな?と思いました。ただ、これ、職業としているデザイナーにはよく分かるかと思うんだけど、デザインとしては究極だとか至高といった類のものの一つのような気しかしないので、…できるかなぁ…?というところ。


デザイン=問題解決 とはよく言われるのですが、問題を解決して(用の)それがそのまま美しい(美)。というのはきっとかなりの至難のワザ。まぁ、何にせよ「やってみる」ことなしには何も出来ないので最低限やってみることかと思います。


そこまでキライではないものの、経営や何かに関してはたまに誰か代わりにやってくれないかな〜と思う方なのですが、こと デザインする ということに関する探究心は尽きなさそうです。


※柳宗悦氏が唱えた「用の美」は元々は民芸品、職人による手作りのものに当て嵌まる考え方なので、工業製品(量産品)であるこの梯子は正確には意味合いが異なるかもしれません。ただ、機能を追究した結果美しくなったもの。という大きな意味・現代的な解釈としてはそのままかと存ずる。


Thank you for reading.


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